2025 年 12 月 15 日

  • 米国食品医薬品局(FDA)は、数十年ぶりに淋菌感染症(淋病)治療向けに開発された

け ん だ く

抗菌薬であるヌゾルベンス(NUZOLVENCE®、一般名:ゾリフロダシン)(経口 懸濁 液

用) を承認しました。

  • この決定は、薬剤耐性淋菌の治療における大きな転換点となるでしょう。
  • 非営利団体の主導によるこの画期的な取り組みは、世界的な薬剤耐性(AMR)との闘いにおける、新しい抗菌薬研究開発のありかたを示しています。

スイス・ジュネーブ発 – グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ(GARDP)は 12 月 12 日、米国食品

け ん だ く

医薬品局(FDA)が、ヌゾルベンス(ゾリフロダシン)(経口 懸濁 液用)を承認したことを発表しまし

た。本剤は、体重 35kg 以上の 12 歳以上の小児および成人における単純性の尿路性器淋菌感染症に対する治療を目的とした単回投与の経口抗菌薬であり、同感染症の治療に用いられるファーストインクラスの薬剤です。これは、数十年ぶりに登場した淋菌感染症に特化した新しい治療薬であるとともに、これまでに例のない非営利団体の主導によって開発された、薬剤耐性菌の拡大に対処するための画期的な新薬です。

世界で年間 8,200 万件以上の新規淋菌感染症が発生する中、ゾリフロダシンはこの性感染症に苦しむ患者にとって待望の治療選択肢となります。淋菌(Neisseria gonorrhoeae)は、治療に用いられてきたほぼすべての抗菌薬に耐性を獲得しており、現在推奨されている最後の治療薬はセフトリアキソンのみです。しかし一部の地域では近年、感染例のうち同薬に対する耐性菌の割合が 6 倍に増加しており、深刻な状況となっています。ゾリフロダシンのような新しく効果的な抗菌薬がなければ、淋菌感染症は薬剤耐性によって治療不能な疾患の仲間入りをしていたかもしれません。

ゾリフロダシンは、イノビバ社(NASDAQ: INVA)の子会社であるイノビバ・スペシャルティ・セラピューティクス社との官民パートナーシップを通じて開発されました。米国では、イノビバ・スペシャルティ・セラピューティクス社が新薬承認申請を行い、販売承認を受けています。(背景説明資料(英文))今回の承認は、 GARDP が出資・主導した第 3 相臨床試験の結果に基づくもので、この試験では、国際的な標準治療法との比較においてゾリフロダシンは主要評価項目を達成しました。試験結果は 12 月 11 日付で医学誌

The Lancet』に掲載されています。さらに、過去の in vitro 試験においても、ゾリフロダシンはすべての多剤耐性淋菌株に対して活性を示し、他の抗菌薬に対する交差耐性は認められませんでした。

「淋菌の多剤耐性化に対し、これまで抗菌薬の開発は遅れを取ってきましたが、今回の承認はこの感染症の治療における大きな転機となります。またゾリフロダシンは、従来とは異なる官民パートナーシップによる抗菌薬開発が可能であることを証明しました。この取り組みは、世界の公衆衛生上のニーズに注目し、影響

の大きな地域で抗菌薬へのアクセスを確保し、新薬の有効性を長期にわたり維持することを目指しています。」と GARDP 代表のマニカ・バラセガラム医師は述べています。

今回の第3 相試験は、新規の淋菌感染症治療薬を対象とした臨床試験として過去最大規模であるだけでなく、地理的・人口統計的にも極めて多様な試験でした。この試験には、4 大陸 5 カ国(ベルギー、オランダ、南アフリカ、タイ、米国)の 16 の試験施設から 930 名の患者が登録されました。試験は、淋菌感染症の有病率が高い地域で実施され、女性、青年、HIV 陽性者など、従来の試験では対象とされることが少なかった集団を含むよう設計されました。

「淋菌感染症は世界的に重大な公衆衛生上の懸念事項であり、薬剤耐性の深刻化は新規治療薬の緊急性を一層高めています。数十年にわたる新薬の不在と耐性菌の増加により、このありふれた性感染症の治療は非常に難しくなっています。」と、アラバマ大学バーミンガム校医学部名誉教授で、試験計画の責任者であり本試験の設計と実施を監督したエドワード(ネッド)・フック医学博士は述べています。

ゾリフロダシンは、スピロピリミジントリオン系と呼ばれる新しいクラスの抗菌薬に属し、細菌の機能と増殖に不可欠な「II 型トポイソメラーゼ」という酵素を阻害する独自の作用機序を持っています。ゾリフロダシンは、淋菌感染症の治療専用に開発され、この適応に特化することで、対象感染症以外に臨床使用されないことを企図しています。このアプローチにより、過剰使用による耐性菌の発生リスクを最小限に抑え、ゾリフロダシンの有効性をより長く維持することが期待されています。

「タイ国内の医療現場においては、薬剤耐性の淋菌感染症が人々の生活に深刻な影響を与えている現状を身近に感じています。症例が増加する中で、より良い治療法を提供するために、影響の大きな地域や集団を対象に試験を実施することは大きな意義があります。今回のような単回投与の経口治療薬は、淋菌感染症の制御においてゲームチェンジャーとなるでしょう。これは、患者の疾病負担を軽減し、薬剤耐性淋菌の世界的な拡散を防ぐために不可欠です。」と、タイ保健省バンラック性感染症医療センターの主任研究者であるロッサポーン・キッティヤオワマーン医師は述べています。

GARDP は、世界の 4 分の 3 以上の国々でゾリフロダシンの承認取得と販売に関する権利を有しており、その中にはすべての低所得国、大半の中所得国、さらに複数の高所得国が含まれます。一方、イノビバ・スペシャルティ・セラピューティクス社の関連会社であり、以前のライセンス保持者であるエンタシス・セラピューテ ィクス社(Entasis Therapeutics, Inc.)は、北米、EU、アジア太平洋地域の主要国におけるゾリフロダシンの商業権を留保しています。

イノビバ・スペシャルティ・セラピューティクス社は、欧州医薬品庁(EMA)への承認申請に向けて GARDP と引き続き連携します。上記に先立ち、GARDP は、まずタイと南アフリカで販売承認取得への準備を進めています。両国は GARDP にとって重要なパートナーであり、第 3 相試験でも中心的な役割を果たしたことから、最初の申請国の候補となりました。2025 年 12 月初旬、タイでゾリフロダシンの優先審査申請が行われました。南アフリカでは 2026 年初頭に申請が予定されています。GARDP は、ゾリフロダシンへのアクセスを拡大するため、必要に応じて追加データを取得することを約束しています。

ゾリフロダシンの開発に関する GARDP の取り組みは、ドイツ連邦政府(研究・技術・宇宙省および保健省)、英国政府(保健・社会福祉省の一部である「グローバル AMR イノベーション基金(GAMRIF)」および現在の外務・英連邦・開発省に統合された旧国際開発省)、日本政府(厚生労働省)、オランダ政府(健康・福祉・スポーツ省および外務省)、スイス連邦政府(保健庁)、ルクセンブルク大公国、スイス・ジュネーブ州、南アフリカ医学研究評議会(SAMRC)、そしてレオ・モデル財団からの支援を受けています。また、この取り組みは、アストラゼネカ社が新規化学構造を最初に特定した初期研究と、米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)がスポンサーとなった極めて重要な第 2 相臨床試験の成果を基盤としています。

GARDP | Global Antibiotic Research and Development Partnership

(グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ)

GARDP(ガードピー)は、公衆衛生上の深刻な問題のひとつである薬剤耐性菌感染症の増加と蔓延から人々を守るために活動する非営利のグローバルヘルス組織です。私たちは、官民パートナーシップを通じ、抗菌薬を必要とする人々のために抗菌薬および抗菌治療法を開発し、利用できるようにしています。

私たちの活動は、カナダ、ドイツ、日本、モナコ、オランダ、スイス、英国、ジュネーブ州政府、欧州連合

(EU)、 ビル&メリンダ・ゲイツ財団、グローバルヘルス EDCTP3、GSK、RIGHT 財団、南アフリカ医学研究評議会 (SAMRC)、ウェルカム財団からの支援で支えられています。GARDP は、GARDP 財団という法人名で スイスで登録されています。 www.gardp.or日本語情報

【本プレスリリースに関するお問い合わせ】   GARDP(日本)広報担当 DNDi Japan 野田 葉子 ynoda@dndi.org/ 電話: 070-4465-5453