薬剤耐性菌感染症向けの新たな抗菌薬開発につながる可能性のあるタンパク質と化合物の結合構造の解明に向け連携

2025 年 7 月 18 日

ジュネーブ/東京発  ―  グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ(GARDP)と東京科学大学は、このほど、新しい抗菌薬開発に向けた共同研究契約を締結しました。この契約では、GARDP が保有する有望な化合物を、より効果的な抗菌薬にするための改良(最適化)を進めていきます。両者は、これらの化合物が細菌の特定のタンパク質にどのように結びつくのかを、結晶構造という方法で詳しく解析することを目指しています。この研究によって、薬剤耐性菌感染症に有効な新たな抗菌薬を開発するための重要なヒントが得られる可能性があります。

この研究では、世界保健機関(WHO)が「新しい治療法が緊急に必要」として優先的に対策を求めている大腸菌(Escherichia coli)や肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)などのグラム陰性菌の生存に不可欠な特定のタンパク質を標的としています。このタンパク質は、既存の抗菌薬では無効化できておらず、「未開拓の標的(unrealized  target)」と位置づけられています。そのため、薬剤耐性菌の治療に有効な新規抗菌薬の創出において、極めて重要な研究対象となっています。

「このプロジェクトが成功すれば、化合物の設計をさらに洗練させるために役立つ重要な構造データが得られます。この研究は、薬剤耐性菌に対抗するための新しい抗菌薬の創出につながる可能性があります」と、東京科学大学でこのプロジェクトを主導する構造生物学の専門家、村上聡教授は述べています。

このプロジェクトでは、東京科学大学の村上教授が主導し、世界的に評価されているタンパク質の結晶構造解析の研究成果を活用します。GARDP と東京科学大学は、GARDP が提供する候補化合物と標的タンパク質の共晶化(複合体の結晶化)を試みます。その後、X 線結晶構造解析を用いて、これらの複合体の構造を原子レベルで詳しく調べる予定です。

「村上教授とこの標的に基づく創薬研究プロジェクトで協力できることを大変うれしく思います。このプロジェクトは、私たちの研究開発の方向性にも非常によく合っており、薬剤耐性菌に対抗するための新しい前臨床候補化合物の発見と実用化に向けたパートナーシップの方針にも合致しています」と、GARDP の創薬部門責任者であるアラン・ヘネシーは述べています。

このプロジェクトは、GARDP が日本のパートナーと共同で取り組んでいる活動の一つです。日本政府は 2020 年から GARDP を支援しており、これまでに 900 万米ドルの資金を提供しています。日本は G7 および G20 のメンバーとして、薬剤耐性菌(AMR)対策において世界的なリーダーシップを発揮してきました。また、いくつかの日本企業も GARDP のプロジェクトに関わっており、現在、創薬・探索研究やアクセス、子ども向けの抗菌治療法の開発などで協業しています。

GARDP | Global Antibiotic Research and Development Partnership

(グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ)

GARDP(ガードピー)は、公衆衛生上の深刻な問題のひとつである薬剤耐性菌感染症の増加と蔓延から人々を守るために活動する非営利のグローバルヘルス組織です。私たちは、官民パートナーシップを通じ、抗菌薬を必要とする人々のために抗菌薬および抗菌治療法を開発し、利用できるようにしています。 私たちの活動は、カナダ、ドイツ、日本、モナコ、オランダ、スイス、英国、ジュネーブ州政府、欧州連合 (EU)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、グローバルヘルス EDCTP3、GSK、RIGHT 財団、南アフリカ医学研 究評議会

(SAMRC)、ウェルカム財団からの支援で支えられています。GARDP は、GARDP 財団という法人名でスイスで登録されています。 www.gardp.or日本語情報有り)